教育生成AIワークショップ倫理データサイエンス

高校生と挑む「4コマ漫画制作」──生成AIの創造性と倫理を学ぶ70分

2025年7月6 分で読めます対象:高校生
講義風景

講義の背景

2025年7月、昌平高校にて2日間にわたる「データサイエンスCamp」が開催され、その一環として「生成AI応用」の講義・ワークショップを担当しました。 このCampは、AIやデータサイエンスへの関心を高め、将来の進路選択に役立ててもらうことを目的としています。

事前アンケートでは、「データサイエンス」や「AI」に対して、「難しそう」「怖い」といったイメージを持つ生徒も少なくありませんでした。 文系の生徒からは「自分には関係ないのではないか」という不安の声もあり、技術的な解説だけでなく、「誰でも創造的に使える」ことを体感できる内容が求められていました。

生徒の実態(事前アンケートより)
「理系分野で、文系の自分には難しそう」「難しいコードが並んでいるイメージ」という声がある一方、「これから先生きていれば絶対に関わるもの」「便利なもの」という期待も混在していました。

ゴール設定

本講義(第8回講座:生成AI応用)では、単なるツールの紹介にとどまらず、以下の3点を持ち帰ってもらうことをゴールに設定しました。

01
マルチモーダルAIの可能性を知る
文章だけでなく、画像生成も含めた「マルチモーダル」な連携によって、表現の幅が広がることを体験する。
02
プロンプトエンジニアリングの実践
AIへの指示(プロンプト)次第で出力が大きく変わることを、4コマ漫画制作を通して体感する。
03
AIのリスクと倫理観の醸成
「ハルシネーション(嘘)」や「著作権・フェイクニュース」の問題を知り、正しく怖がりながら使う姿勢を学ぶ。

70分の構成

講義時間は約70分。座学は最小限に留め、実際に手を動かすワークショップの時間を長めに確保しました。 冒頭のアイスブレイクで緊張をほぐし、スムーズに制作活動へ移行できる構成にしています。

時間内容
0–10 分イントロダクション・アイスブレイク(曲当てクイズ)
10–15 分講義:生成AIとマルチモーダルAIの仕組み解説
15–55 分演習:生成AIで4コマ漫画を作ってみよう
55–65 分講義:生成AIの問題点(偽情報・著作権)と向き合い方
65–70 分まとめ・振り返り
アイスブレイクの工夫
冒頭で「曲当てクイズ」を実施。AIに関する堅苦しいイメージを払拭し、 「楽しそう」「参加しやすそう」という雰囲気作りを意識しました。

座学: AIの基本

ワークショップに入る前に、まずは前提知識として「AIとは何か」を解説しました。 世の中で活躍しているAIを「識別系AI(データを見て判断するAI)」と「生成系AI(新しいものを作り出すAI)」に分類し、生成系AIが得意とすること・苦手なことを整理しました。

識別系AIと生成系AIの違い

さらに、テキストだけでなく画像や音声も組み合わせて理解・生成する「マルチモーダルAI」の仕組みについても触れ、プロンプトの出し方次第で思い通りの表現が可能になることを紹介しました。


ワークショップ: 4コマ漫画

今回のメインコンテンツは、「生成AIを使って4コマ漫画を作る」ワークショップです。 ストーリー構成から画像生成までをAIと協働で行い、短時間で作品を完成させます。

4コマ漫画生成の裏側

Step 1: サブテーマの決定

まずは漫画のテーマを決めます。大枠のテーマに加え、各自が興味のある「サブテーマ」を設定することで、 生徒一人ひとりのオリジナリティが出せるようにしました。

Step 2: あらすじ生成(テキスト生成AI)

決定したテーマを元に、テキスト生成AIに4コマ漫画の「起承転結」を考えてもらいます。 ここで「もっと面白くして」「オチを変えて」といったプロンプトによる指示出し(壁打ち)を体験します。

Step 3: 画像生成プロンプトの設計

生成されたあらすじを元に、今度は画像生成AIへの指示文(プロンプト)を作成します。 「誰が」「どこで」「何をしているか」を具体的に言語化する難しさと面白さを学びます。

Step 4: 画像生成と仕上げ

実際に画像を生成し、PowerPoint等のスライドに画像を配置して4コマ漫画を完成させます。 最後に周囲と作品を見せ合い、発表を行いました。

創造性の拡張
絵が描けなくても、アイデアと言語化能力があれば作品が作れる。 この体験を通して、AIが「人間の創造性を奪うものではなく、拡張するもの」であることを実感してもらいました。

高校生の反応

2日目の事後アンケートでは、多くの前向きなフィードバックが得られました。 特に、実際に手を動かしたことでイメージが変化した生徒が多かったようです。

楽しかった・親しみ

「アイスブレイクもとても楽しかったです!」「自分の身近な存在であったこと。案外柔軟な思考が問われて、理系でなくてもデータサイエンスに大きくかかわれるんだなと思った。」

AIへの認識の変化

「AIは万能でないことを再認識。AIも最終的には人間が操作しているのは変わらないからうまく活用していきたいと思った。」「人類への恩恵は計り知れないものだが、その分恐ろしい存在だなというイメージを持っています。」

講義形式について

「図が見やすかったのと、講師の方の説明が優しく、とても丁寧だったと思います。」「PCを使ってタスクを進める時間やスピードを、もう少し多くしたり遅めにしてくださると、より一層よくなると思います。」

講義の最後には、「偽情報(フェイクニュース)」や「著作権」についても触れました。 スライドで具体的な事例を示したことで、 「便利だが恐ろしい側面もある」というバランスの取れた理解に繋がったようです。

個人情報が流出するリスク

講師の気づき

アンケート結果から、「理系・文系」という枠組みを超えて、AIという技術が 「自分の思考を形にするツール」として受け入れられた手応えを感じました。

一方で、「PC操作の時間をもっと増やしてほしい」という要望もありました。 ツールに慣れるまでの時間には個人差があるため、今後はTA(ティーチングアシスタント)の サポート体制や、進度調整の工夫がより重要になると感じました。

生徒との対話風景
教育の視点
「AIを使う」こと自体は目的ではなく、それを使って「何を考え、何を作るか」が重要です。 4コマ漫画という親しみやすい題材は、その導入として非常に効果的でした。

次のステップ

今回のCampでの経験を活かし、さらにブラッシュアップした活動を続けていきます。

操作時間の個人差を埋めるためのガイド資料の充実
著作権や倫理に関する、よりディスカッション中心のワーク設計
生成AIを活用した地域課題解決(地方創生)への応用

今後も、次世代を担う高校生たちが、AIという強力な技術を「正しく、創造的に」 使いこなせるよう、現場での対話を大切にしていきたいと思います。